主な内容
直腸肛門周囲膿瘍および痔瘻の診療における肛門管超音波検査、細菌培養検査、直腸肛門内圧検査の意義を前向きに検討した。①リニア観察とラジアル観察を併用した肛門管超音波検査によって痔瘻と非痔瘻性膿瘍の鑑別、痔瘻の病型分類、痔瘻の原発口の同定の正診率は有意に向上した。また、理学的所見、超音波検査ともに膿瘍形成期より炎症消退期のほうが正診率が高かった。②細菌培養検査では、痔瘻性膿瘍からは腸管由来の細菌群が、非痔瘻性膿瘍からは皮膚由来の細菌群が有意に高率に検出された。③括約筋非貫通型のⅡ型痔瘻は瘻管開放手術を行っても術後の肛門機能への影響は軽度であったが、術前の肛門努力収縮圧低値症例は術後機能障害の危険因子であった。一方、括約筋貫通型のⅡ型痔瘻およびⅢ型痔瘻では、括約筋温存手術は瘻管開放手術に比べ術後の肛門機能障害の頻度は有意に低率であった。以上より、肛門管超音波検査、細菌培養検査、直腸肛門内圧検査は、直腸肛門周囲膿瘍・痔瘻の客観的かつ有力な補助診断法であり、それらの診断や治療方針の決定には積極的に用いるべきと考えられた。
The aim of this prospective study was to estimate the values of endoanal ultrasonography, microbiological examination and anorectal manometry in the treatment of anorectal sepsis and anal fistula. Accuracy of endoanal ultrasonography with combination of linear and radial views was significantly higher than that of physical examination in detecting the presence of anal fistula, classifying the type of anal fistula, and localizing the internal opening. The microbiology showed that gut derived organisms were prevalent in anorectal sepsis with anal fistula and skin derived organisms were prevalent in those without anal fistula. In patients with trans-sphincteric Sumikoshi typeⅡfistula and type Ⅲ fistula, non-sphincter splitting fistulectomy provided better functional results than sphincter splitting fistulotomy. On the other hand, in patients with intersphincteric Sumikoshi typeⅡ fistula, both surgical procedures provided good functional results, although low preoperative voluntary contraction pressure was the risk factor of postoperative incontinence. In conclusion, endoanal ultrasonography, microbiological examination and anorectal manometry are useful for preoperative assessment of anorectal sepsis and anal fistula.
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