【背景】肛門病変が腸管症状に先行してクローン病が発見されることは稀ではなく、早期診断の契機となりうる。
【方法】2009年~2016年にかけて福岡山王病院または豊永医院を肛門症状で受診し、肛門所見よりクローン病が疑われ、消化管精査にて確定診断された29例について、肛門病変所見と上部・下部内視鏡所見を中心に検討した。
【結果】平均年齢は24歳で男性25例、女性4例であった。全例に肛門症状を認め、痔瘻が17例と最も多く(多発痔瘻4例、再発痔瘻4例)、難治性裂肛は5例、スキンタッグは4例、直腸肛門狭窄は2例に認めた。腹部症状は下痢9例、腹痛2例、食思不振1例、排便困難1例であった。また5例に体重減少と1例に持続する発熱を認めた。クローン病診断時の病型分類は多発アフタ型が14例と最も多く、小腸大腸型6例、小腸型5例、大腸型3例、直腸型1例であった。特徴的な胃・十二指腸病変は27例に認めた(竹の節状外観22、十二指腸のアフタ・びらん20、前庭部びらん11、食道潰瘍1)。肉芽腫は18例で検出された(胃2、十二指腸1、回腸6、大腸11、肛門2)。経過中、多発アフタ型の3例が小腸大腸型に進展した。肛門病変に対しては23例に外科治療が行われた(シートン20例、肛門ブジー2例、痔瘻根治手術1例)。また3例に狭窄や穿孔に対する腹部外科手術が行われた。
【結論】クローン病に特徴的な肛門病変所見を知悉し、積極的に上部および下部内視鏡による消化管精査を行うことで、消化器症状発現前のクローン病早期診断の可能性が高まり、早期の治療開始と長期QOLの改善が期待できるかもしれない。
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