主な内容
背景と目的:直腸肛門周囲膿瘍の治療は迅速な外科的切開排膿が基本である。しかし、再発を予防するためには痔瘻の存在を見逃してはいけない。我々は、直腸肛門周囲膿瘍患者に対する細菌培養検査および経肛門超音波検査が痔瘻の予測において有用かどうかを検討した。
方法:直腸肛門周囲膿瘍514例を対象とした。臨床所見、直腸指診所見、細菌培養検査所見、超音波検査所見を痔瘻の有無の最終的な手術所見と比較した。
結果:痔瘻による直腸肛門周囲膿瘍は418人で、痔瘻のない直腸肛門周囲膿瘍は96人であった。細菌培養検査によると、大腸菌、Bacteroides属、Bacillus属とKlebsiella属が痔瘻を有する患者で有意に高率に同定された(P<0.01)。そして、Coagulase-negative StaphylococcusとPeptostreptococcus属が痔瘻を伴わない患者で有意に高率に陽性であった(P<0.01)。一方、経肛門超音波検査の正診率は94%であった。
結論:直腸肛門周囲膿瘍で『皮膚由来の』細菌より『腸由来の』細菌の培養同定は、より高率に痔瘻が存在する傾向があった。初回の切開排膿手術で痔瘻の存在が不明であっても、『腸由来の』細菌が同定された場合は、炎症消退期に直腸指診と経肛門超音波検査を再び施行し、痔瘻の見逃しを避けるべきである。
Background and aims: Treatment of anorectal sepsis requires prompt surgical drainage, but it is important to identify any associated anal fistula for preventing recurrence. We evaluated whether microbiological analysis and/or endoanal ultrasonography could be used to predict anal fistula in patients with acute anorectal sepsis.
Methods: 514 consecutive patients with acute anorectal sepsis were studied. Clinical data, digital examination findings, endosonographic findings and results of microbiological analysis were compared with definitive surgical findings of the presence or absence of anal fistula.
Results: Anorectal abscess with anal fistula was found in 418 patients, and anorectal abscess without anal fistula was found in 96 patients. Microbiological examination showed that Escherichia coli, Bacteroides, Bacillus and Klebsiella species were significantly more prevalent in patients with fistula (P<0.01), and coagulase-negative Staphylococci and Peptostreptococcus species were significantly more prevalent in patients without fistula (P<0.01). Results of endoanal ultrasonography were concordant with the definitive surgical diagnosis in 421 (94%) of 448 patients studied.
Conclusion: Acute anorectal sepsis due to colonization of ‘gut-derived’ microorganisms rather than ‘skin-derived’ organisms is more likely to be associated with anal fistula. When the microbiological analysis yields ‘gut-derived’ bacteria but no fistula has been found in the initial drainage operation, repeat examinations during a period of quiescence, including careful digital assessment and meticulous endosonography, are warranted to identify a potentially missed anal fistula.
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