主な内容
【背景】肛門部子宮内膜症は稀な疾患で、そのほとんどは分娩時に子宮内膜組織片が会陰切開創に移植することで発生すると考えられている。治療法には主に外科的切除とホルモン療法があり、その適応は肛門部病変の大きさや症状の他に、年齢、肛門括約筋への進展の有無、他臓器の子宮内膜症の有無、肛門括約筋機能(会陰切開による括約筋損傷の程度)を考慮にいれて決定される。今回、われわれは肛門部子宮内膜症の2例を経験したので、診断と治療における経肛門超音波検査の有用性を中心に報告する。
【症例】症例1は43才女性。主訴は肛門部の腫脹感と痛み。直腸診では肛門前方に小指頭大で円形の硬い腫瘤を認めた。経肛門超音波検査で皮下に1cm大の低エコー腫瘤が描出され、肛門管との交通や外肛門括約筋への進展は認めなかった。腰椎麻酔下に局所切除を行ったところ、腫瘤内部は凝血塊が充満し、いわゆるチョコレート嚢胞の所見であった。病理組織診断は子宮内膜症であった。術後15ヶ月で再発は認めない。症例2は30才女性。主訴は月経時の肛門部痛。直腸診で肛門部右前方に圧痛を伴う硬結を認めた。経肛門超音波検査で9〜11時に1.5cm大の低エコー腫瘤を描出し、肛門管との交通は認めなかったが、外肛門括約筋への進展が疑われた。また、会陰切開による外肛門括約筋の断裂像を認めた。腫瘤の生検を行い、子宮内膜症と診断された。術前の肛門内圧検査で随意収縮圧の低下を認めた。治療は外科的広範囲切除を選択し、腰椎麻酔下に会陰切開瘢痕組織と球海綿体筋、外肛門括約筋の一部を含めた腫瘤切除と肛門括約筋形成術を一期的に行った。摘出標本の免疫組織染色でEMA、vimentin、エストロゲンレセプター、CA125が陽性であった。
【結論】肛門部子宮内膜症の診療に経肛門超音波検査は有用であった。肛門括約筋への進展を認める内膜症に対しては、括約筋を含めた完全切除と一期的括約筋形成術が有効であった。
We report two cases of perianal endometriosis in which we were greatly assisted by endoanal ultrasonography. Patient 1 was a 43-year-old woman with perianal pain. Endosonography showed a hypoechoic mass in the anterior perianal region without involvement of the anal sphincter. Local excision was performed under spinal anesthesia without damage to the anal sphincter. Patient 2 was a 30-year-old woman with perianal pain coinciding with her menstrual period. Endosonography showed a heterogeneous mass containing cystic anechoic areas in the right anterior perianal region and involving the external anal sphincter. Wide excision, including the episiotomy scar and part of the external anal sphincter, and primary sphincteroplasty were performed under spinal anesthesia. According to our experience, preoperative endosonography is a reliable technique for visualizing perianal endometriosis and for diagnosing anal sphincter involvement. Operative management should be determined on the basis of preoperative and intraoperative ultrasonographic assessment.
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