痔核ってどんな病気?
痔核の病態と原因
痔核(いぼ痔)は肛門にある静脈がいぼのように膨らんだり、おしりの閉鎖に必要なクッション組織がゆるんでできるものだと考えられています。肛門と直腸の境目にある歯状線より内側(口側)にあるものを内痔核、外側(肛門側)にあるものを外痔核といいます。症状は出血、疼痛、肛門内違和感、腫脹、脱出などです。痔核は左側方、右後方、右前方(3時、7時、11時)にできやすいといわれています。それはこの3方向に分岐した痔動脈が走っていることが多いからです。
痔核にはいろんなタイプがある
痔核の重症度や分類
痔核には治療の必要がない軽症のものから手術が必要な重症のものまでさまざまです。内痔核の分類には、Goligher分類というのが長い間世界中でよく使われています。
内痔核の分類
内痔核はうっ血しているが、肛門外への脱出はとぼしいものです。まずは生活習慣の改善、排便コントロール、お薬の治療からはじめましょう。
内痔核が排便時に肛門外へ脱出するが、排便後は自然にもとにもどるものです。まずは生活習慣の改善、排便コントロール、お薬の治療からはじめます。注射の治療や日帰り手術を行うこともあります。
排便のたびに痔核が肛門外に脱出し、そのつど指でもどさないといけないものです。まずは生活習慣の改善、排便コントロール、お薬の治療からはじめますが、完治させるには手術を行う必要があります。
痔核が大きかったり、外痔核を合併していたりして、完全におしりの中にもどすことができないものです。まずは生活習慣の改善、排便コントロール、お薬の治療からはじめますが、完治させるには手術を行う必要があります。
血栓性外痔核 けっせんせいがいじかく
急に血流のうっ滞が起こり肛門の外側に血栓をつくったものです。青みをおびたしこりをつくり軽度~中程度の痛みを生じます。硬い便、アルコール、冷え、長時間の運転や乗り物が原因になることが多いようです。小さいものはお薬でなおりますが、大きいものは日帰り手術をすることもあります。
嵌頓痔核 かんとんじかく
いままで戻っていた内痔核が腫れ上がり、飛び出したままでもどらなくなった状態です。痔核の中に多くの血栓ができ、おしりは全体に腫れ上がり、とても強い痛みを生じます。日常生活が困難になることもあるため出来るだけ早い治療が必要です。緊急手術になることもあります。
痔核を治そう!
痔核の治療法と予防
まずはいいお通じの習慣を
- 硬い便通や長い怒責の習慣はおしりに負担をかけ、痔核を悪化させる最大の原因です。
- 食物繊維と水分を充分に取り、やわらかい便になるように心がけましょう。
- 便秘体質のかたはくせにならないタイプの軟便剤を使うこともいいでしょう。おしりにやさしいお通じのかたさは歯磨き粉くらいだといわれています。
- トイレの時間の5分以内を目指しましょう。なかなか出ないときはいったんトイレから出る勇気も必要です。
- 便秘の予防についてはこちらもご覧ください
日常生活で気をつけること
- 規則正しい生活をしてなるべく決まった時間に朝食をとるようにしましょう。そうすることによって次第にいい排便のリズムがもどってきます。
- 仕事で座りっぱなしや立ちっぱなしの方は、休憩をいれてなるべく同じ姿勢をとりつづけないことも大事です。
- 冷えはおしりの血行を悪くしますので腰のまわりは保温をこころがけましょう。
- 入浴や坐浴はおしりを温め血行を良くします。とくに痔核の腫れの強いときはおしりの緊張もほぐれ鎮痛効果もあります。
- お酒は逆に血行をよくしすぎるため出血の原因となります。出血が続いた時はアルコールは控えましょう。
- 痔の予防についてはこちらもご覧ください
効果的なお薬の使い方
- お薬には飲み薬、塗り薬、坐薬などいろんな種類があります。
- 軽い症状の時は数日ぐらい市販の薬を使うのもいいと思います。
- それでも症状がとれないときは肛門科を受診しましょう。痔の座薬ひとつとっても、痛みをとるのにいい坐薬、腫れをとるのにいい坐薬、出血を止めるのにいい坐薬、比較的長期間使える坐薬などさまざまあり、経験の豊富な専門医は病状や時期に応じて使い分けています。
- 症状が強いときは朝の排便後と夜の入浴後に日に二回坐薬を使うのが効果的です。
- 症状が軽くなれば日に一回に減らして様子をみましょう。
- さらに症状がなくなれば、調子の悪いときにだけ使ってみるのもいいでしょう。
- 痔の薬物療法についてはこちらもご覧ください
二種類ある注射療法
- 現在行われている注射療法にはパオスクレーとジオンの二種類があります。
- パオスクレーは油性のアーモンドオイルで痔核の口側に注射することで、痔核を栄養する血管をつぶし出血をおさえる薬です。通常麻酔は使用せず外来で行うことができます。出血を中心としたⅠ度からⅡ度の内痔核には効果があります。また長期間使われてきた薬ですので重大な副作用もなく安心して使えます。
- ジオンは中国の消痔霊を参考に開発された硬化剤で、タンニン酸とアルミニウムを主成分としています。止血作用とともに強い炎症作用もあり、脱出を主訴とするⅢ度の内痔核にも有効です。ただし潰瘍や肛門狭窄などの副作用も報告されているため、講習を受けた医師に限定されています。比較的新しい薬ですので長期的な効果はよくわかっていません。麻酔無しで外来で行うか、しっかり麻酔をして短期入院で行うかは施設によって違うようです。
- ジオンの詳しいお話はこちらをご覧ください
日帰り手術
- 患者さんや社会のニーズで答えるように、最近外来手術や日帰り手術は増えてきています。
- Ⅰ度からⅡ度の内痔核に対するゴム輪結紮治療は通常麻酔無しで行います。
- 外痔核や皮膚痔にたいする外痔核切除は通常局所麻酔で行います。
- 血栓性外痔核に対する血栓除去手術は通常局所麻酔で行います。
- 日帰り手術についてはこちらをご覧ください
入院手術
- Ⅲ度からⅣ度の内外痔核をしっかり治すためには、充分な麻酔をかけて、痛みを完全にとり、またおしりの緊張をとっておしりの奥深くまでちゃんと処置をする必要があります。
- 日本でも世界でもやはり専門医で通常行われている手術は結紮切除手術(痔核を栄養する血管を糸でしばり、痔核組織を切除する)です。
- 結紮切除手術は通常腰椎麻酔で行い、切除する痔核の数によって数日の短期入院から1週間の入院までさまざまです。
- 自動吻合器を使うPPHという手術は一部の痔核(全周性の粘膜脱出タイプ)には有効です。しかし違和感や再発などの副作用もあり、適応を選ぶことが重要です
- 手術に関するご質問はこちらをご覧ください